運動神経をよくする方法|中学生向け完全ガイド

運動神経は才能ではありません。
運動神経は生まれつきだけで決まるものでもありません。
脳や神経のつながりは中学生の時期に大きく発達しやすく、身体の扱い方を知れば大きく伸ばすことができます。ただ、残念ながら現代の学校教育では運動神経をよくする方法は皆無ですし、年々体育の授業の内容が酷くなっている傾向すらあります。
とある県の小学校、体育の研究授業(県の体育科のお偉いさん方が集結した研究授業。)を見学したことがありますが、正直なところ身体操作の観点からみると、とんでもないお粗末な内容の体育授業でした。にも関わらず、見学されていた県教育委員会上層部の方からはその授業が絶賛されていました。
一般的な現代の社会環境(特に都会)で生活していると、運動神経をよくするチャンスは残念ながらほぼほぼなく、由々しき問題といえます。今回は運動神経をよくする方法を、運動神経を上げる大チャンスの中学生時代にやって欲しいことを中心にまとめていますので、運動神経を少しでもよくしたい方がいらっしゃれば、ぜひ参考にしてみてください。
運動神経が良いってどういうこと?
運動神経が良いと良く言いますが、そう言われる人の特徴は…
『動きがキレイ、美しい』
『動きがしなやかで軽い』
『動きにキレがあり速い』
このような印象を持たれているのではないでしょうか。
そもそも世間的に云われている運動神経は運動能力とイコールになっていて、身体においての運動神経は、脳から筋肉や内臓に指令を送る神経のことを表しますので、脳からの指令が上手く筋肉へ伝達できると運動能力は上がりやすくなり、上記の様な動きが可能になってきます。
実際に運動能力が高い中学生の特徴は…
- 運動感覚が優れている
- 身体操作能力が高い
- 想像力が豊か
になり、この3つは一定レベルで兼ね備えています。では、それぞれ具体的に解説していきます。
運動感覚が優れている
運動感覚という言葉はあまり聞きなれないと思いますが、簡潔に云うと、自分の身体の状態を把握して調整する感覚になり、具体的に説明すると、自分の今の姿勢や身体の使い方に対して、頭の位置がどこにあるのか、走っている時に腕はどのように振っているのか、ボールを投げる時に足をどの方向に踏み出したのか等を感知することになります。
そもそもこれが鈍いと運動神経は低くなりがちといえますし、逆に運動神経の良い中学生は自分の動き、自分以外の人や物体に対してどう動くべきかを筋肉の収縮・伸張、関節の角度、腱のテンション等の情報処理と微調整を瞬時に行う能力に長けていると云えます。これは筋肉に存在する固有受容器というセンサーの感度が高く、瞬時に反応し、調整する能力が高いということになります。
身体操作能力が高い
運動感覚が優れていると必然的に身体操作能力も上がりやすくなります。
身体操作能力は実際に筋肉の収縮・伸張のバランス、関節の角度、腱のテンション等を意識的に感じ取れ、それらをコントロールして動きしたいように動かす能力、つまり思った通りに身体を操る能力です。
想像力が豊か
3つ目の想像力が豊かは急にボヤけた表現になりますが、最も重要だといっても過言ではありません。
想像力=イメージ力になりますが、イメージで動きを捉える能力というと解りやすいかもしれません。(イメージ力が豊かな中学生は空間認知能力に優れているともいえます。)
空間認知能力とは、自分が三次元空間の中のどこにいて、その自分の位置に対して自分以外の物体がどこにあり、またその大きさ、形状、速さ、向き等の情報を瞬時に把握する能力になりますので、飛んできたボールが上手くキャッチできない、よく人や物にぶつかるという中学生は空間認知能力が弱い可能性があります。
また、自分の動きを客観的に見れて、3Dで捉えることができることも空間認知能力が優れていると云えます。
中学生が運動神経をよくするための大原則
中学生が運動神経をよくしたいという場合、真っ先に己を知るということを伝える様にしています。これは自分の身体の構造を理解させることから始めるということで、自分の身体の構造が理解できれば自ずと動かし方もみえてきます。
まずは、人間の身体を以下の様な骨格で捉え、どの骨をどういう風に動かすかをイメージする意識を持ってもらいたいです。
このイメージを変えるだけでも随分変わると思いますが、身体の中心に骨盤があり、骨盤から背骨が伸びて頭を支え、骨盤に脚(股関節)がついている。そして、胸椎から胸骨にかけて肋骨がついていおり、肋骨の後面上部に肩甲骨が乗っていて、そこから腕がついています。
コレだけでも…
「身体の中心は骨盤なんだな!」
「肋骨って後ろにも回ってるんだ!」
「股関節ってこんな感じなんだ!」
などの様なことに気づいて、これがイメージ力のアップにも繋がっていきます。
中学生にもなれば論理的思考が使えますし、論理的に理解する部分とイメージ力のような感覚的に感じ取る部分をバランスよく組み合わせて意識することが身体操作能力向上の基盤となります。
具体的にやってみて欲しいこと
やはり、運動神経がいいの代名詞と言えば…
走るのが速い
ジャンプ力が凄い
に、なってきますが、この2つは全ての運動のベースになります。
これらの質を上げることは様々な運動に生きてくるので、まずはこの2つに共通する瞬発的な出力を磨いて欲しいです。そして、走りにも、ジャンプにも共通するのが地面を捉える感覚です。
足が遅い、ジャンプ力が無いと感じている中学生に共通していることが走りもジャンプもモモ(膝)を上げる・引きつける(出力のベクトルが上方向)意識です。
確かに足が速い人、高く飛べる人はモモが胸につくぐらい引きつけられています。(ただ、コレは結果的にそうなっているという解釈をした方が上手くいきます。)モモ(膝)を引きつけるよりも足を地面に強く叩く、ベクトルが下方向のイメージを持つことで、その反発(地面反力)をもらい勝手にモモが上がってきます。
つまり、「走るのが速く、高く飛べる人」と「走るのが遅く、高く飛べない人」では、脚の使い方が全く逆のベクトルということになります。
日常生活で意識すべきこと
日常生活で意識すべきことは、当たり前のことを当たり前にすることです。これは、あまり深く考えて行ってはいないであろう『立つ』『座る』『歩く』動作のことになります。
あまりに当たり前に行っている動作ゆえに、これについて深く考えたこともない中学生がほとんどですが、この3つの動作がキチンと行えていなとすれば、そもそもスポーツをしてる場合ではないです。
『座っている状態から立つ動作はまさにスクワット』
『”走る”の原型は歩く』
ゴルフで例えると、素振りが上手くできてない人が遠くにボールを飛ばしたり、上手くコントロールできないことになります。それくらい大切なことなのに、座るから立つというスクワットにおける素振りについてはあまり深く考えず日々行い、走り方は直して速くなりたいと望むのに、歩き方はあまり気にしないというのは、土台がないのと一緒です。
この3つの日々行う動作を気にかけて、質を高めていくことは最も運動神経を高める手段であり基本になります。日常的に何度も行っているため実行している回数が群を抜いており、こなした回数分だけ良くも悪くもなるということです。理にかなった使い方で1万歩歩くのか、何も意識せず1万歩歩くのかで差は開く一方になります。
立ち方の意識
まず立ち姿ですが、これは大体どれぐらい動けるかがわかるともいえる重要な姿勢で、理にかなった立ち方とは、骨で立つ感覚を持つことです。
積み木は上手く重ねられれば、倒れることなく、そこにただ乗っているだけで支える力を必要としません。
このように上手く積み上げられないとジェンガの場合は倒れる訳ですが人間の身体はそうは行かないので、何とか倒れないように維持しようとし続けます。
こうなると筋肉が無駄に頑張る状態になるので、腰痛や肩こりなど慢性痛や膝の痛みなどに悩まされる訳です。
とは言え、ジェンガのように均一な形であれば一切の支える力を必要としませんが、人間の身体はパーツによって形は変わります。
そこが難しい点ではあります。
不揃いの石を重ねて積み上げていくイメージです。
1つ1つの石の重心は異なるのでその重心位置を合わせていくことで積み上げることができ、このように骨と骨の重心を合わせていくイメージで立つことが、骨で立つ感覚です。
この立ち方こそが脱力できている状態であり、脱力できているからこそ上手く出力できます。
座り方の意識
座るという動作は非常に奥が深く、座る質を上げることは、骨盤・股関節の使い方が大きく向上することにつながります。これまで多くの中学生をみてきた中で、中学生は骨盤・股関節を使って座れていないという印象が強いです。
上記のような姿勢で授業を受けたり、ご飯を食べたりしていないでしょうか?このような姿勢になっているのであれば、骨盤・股関節を使える可能性は限りなく0に近いです。
骨盤・股関節を使えると運動神経の半分以上をクリアできるといっても過言ではないほど重要なポイントで、まずは、骨盤を立てて座り、そのポジションから立てるようにする動作の習得が必須です。骨盤を立てたまま股関節を動かす練習を以下参考に行ってみてください。
歩き方の意識
歩く動作は想像の100倍難しいと思ってください。とんでもなく色々な要素が必要で、複雑な動作であるという認識を持つことが必要です。
足裏の重心感覚、脛の角度、膝の向き、股関節の向き、骨盤の使い方、背骨の動き、肋骨の感覚、肩甲骨の意識、腕の使い方、頭の位置、これらの言葉の意味を身をもって体感するには、脳の理解、感覚的理解、腑に落ちるまでの鍛錬が必須になりますし、これらを無意識化で統合的に使えるようにしないといけません。つまり、時間をかけて積み上げていくことでしか得られないということです。
ただ、難しく考えすぎても上手くは行かないので、その中でも自分はどこかできていないのか、それに気づき、受け入れて、見つめ直し、自分の身体と向き合って行ければ小さな変化に気づけるようになってきます。その小さな変化を楽しめるようになってくれば、それはすでに自分のペースです。日々、歩きながら自分の身体の感覚を感じ取る習慣を身につけてください。
歩き方のヒントを以下の記事でご覧いただけます。(運動神経向上もボディメイクも基本の原理原則は変わりません)
理にかなった痩せる歩き方を伝授!ウォーキングの質の重要性と実践
中学生によくある勘違い
中学生によくある勘違いや、やりがちなこと。
- フィジガル強化を目的としたトレーニング
- とにかく数をこなす練習
この2つが非常に気になります。
フィジカル強化を目的としたトレーニング
まず大前提にフィジカルを強化することを否定している訳ではなく、中学生だとフィジカル強化よりも先にやるべきことがあるという順番の話しです。
目的の優先順位が先にフィジカル強化になってしまうと力みやすい重たい動きになる可能性が高くなりますし、中学生の段階だからこそ基礎的な、動きのトレーニングを念頭において鍛錬して欲しいのが実際のところです。
理にかなった動きの習得を目的として、手段としてバーベルやダンベルを用いるというスタンスで、どれぐらいの負荷を現状の身体の使い方で扱えるのかという確かめる感覚でトレーニングする位にして、どれだけ重たい重さを扱えるかではなく、動きにフォーカスして負荷と向き合っていくことが肝要です。
そして、理にかなった使い方ができると身体の大きさ、体重、筋力に比例せずに思いもよらないようなパワーやスピードを簡単に扱えるようになります。もちろん筋力は自ずと使われますが、筋力主体ではなく、使い方が主体になるので思ったより軽い力で上がるというような感覚になる訳です。大切なのは筋肉をつけることではなく、まずは、動作を磨き、その質を高めるということです。
とにかく数をこなす練習
上述した動作を磨く、動きのトレーニングを軸に運動能力を上げる鍛錬をしてほしいのですが、そこで大切なのが質を意識した量を重ねることです。質を上げるためには絶対的な量は必要で、量が伴わないと質は上がってきません。
つまり、考えて動く、トライ & エラーの繰り返しが大切で、脳をコントロールし、身体を操る意識が必要です。求めている動きが無意識化するまでやり込むしか方法しかなく、魔法は存在しません。感覚、理解、意識、実行全てが伴って理にかなった動きは得られますので、近道はなくとにかく意識の強い反復練習が必要になります。
まとめ
運動神経をあげることは、そんなに簡単なことではないですが、中学生の段階で日常の意識や努力の積み重ねを継続していけば、間違いなく可能です。〇〇をすれば運動神経があがるなどの謳い文句をみかけることがありますが、やってみると解ることですが、そんなに簡単なことではありません。
勉強でも運動でもなんでもそうですが、コツコツ積み重ねることが大切ですし、必要なことや正しいことを積み重ねることが大切です。日常生活や誤った概念の見直しなど、まずは身近なものから見直して着手してみてください。きっと何かを掴めるようになってくるはずです。