トレーニングノート

親御さんに知ってほしいスポーツ上達の秘訣

今回はスポーツや運動をされているお子さん、またお子さんが運動が苦手だなと感じられている親御さんにぜひ知っていただきたいスポーツ上達の秘訣をご紹介いたします。

スポーツにおける上達は、スキル(技術)の習得(できるできない)に目が行きがちですが「できる・できない」の前に、そもそもカラダをしっかりと使える状態になっているかが運動のキーポイントになります。

お子さんのカラダが成長する時期だからこそ、親御さんに知っておいてほしい内容になりますのでぜひご覧ください。

※インタビュー動画と共にご覧いただくと説明の動きなども一緒にご覧いただけますのでどうぞご覧ください。

第一章「なぜスポーツが得意な子と苦手な子がいるのか?」

生まれた時はみんな一緒なのになぜスポーツが苦手な子得意な子ができるのでしょうか?

ハッキリと言えるのは、後天的なもので得意苦手が生まれるということです。

もちろん才能という点で差は出てきます。

しかし、オリンピック選手やプロスポーツの世界でも、積み重ねた運動習慣+才能で限界を超え、競技で結果を出しているので、多くのお子さんに言えることは、ある程度のレベルにまでは必ず到達できるということ、運動神経が悪い子など世の中に存在しないことをお伝えしたいです。

例えば、走れない、ジャンプできないという子どもは、ほぼいません。

スピードや高さの個人差はあれど、スタートはみんなできています。

なぜ、できないとか苦手になるかは全て後天的な要素で、単純に「教えてもらえなかった」だけなのです。

なので、比較的運動能力の高い子どもは、何かしらスポーツや運動を始めます。

その時に良い指導に恵まれれば運動が好きになったり、得意になる傾向が強いと感じます。

運動能力は運動を教えてくれるコーチなのか、親なのか、その人の教え方、環境によって、子どもの能力は大きく左右されます。

頭で考える子は、苦手になる傾向があり難しく考えてしまう気がします。

得意になりやすい子は『イメージ』で身体が使えていることが多いです。

逆上がりができる子に聞くと、「雲みたいにふわっと浮いてできた」「足をブワッと振った」などと返事が返ってくることがありました。

自分の感覚を言語化したり、表現できる子どもは、いとも簡単に色々とやってしまいます。

運動において「感覚」は全ての基盤になります。

この感覚を引き出すことができれば、子供が運動を苦手になることはなくなるということです。

ゴールデンエイジをどう過ごすかが重要

3歳から12歳が子どもの運動能力の7080%が決まるという「ゴールデンエイジ」というものがあります。

ですので、親としては312歳の間にどのように一緒過ごすのかということを知っていれば、子どもの運動能力を伸ばしてあげることができます。

どう一緒に過ごすのかと言いますと、具体的とは言い難いですが

「自由に遊ばせておく」

この一言に尽きます。

遊びの邪魔をしない、これがとても重要ということをお伝えしたいです。

  • 「危ないからこれやらないで」
  • 「高いから登らないで」

いやいや、全部やらせてあげてください。

ただし本当に危ない時は必ず助けてあげる、こうすることで、「ここまでいったら落ちるんだ」「これは危ないかも」と子供の危機察知能力は高まります。

この危機察知能力がないまま大人になるので、大人になってから大怪我をしたり、さらに身体を動かすことが苦手になってしまう訳です。

もっと良いのは教えるのではなく、大人も一緒に楽しむということです。

特に失敗を恐れたり、運動への苦手意識が高いと大人が一緒に楽しんでくれるだけで一歩前へ踏み出す力になります。

運動を絞らないこともポイント

先程ゴールデンエイジの話をしましたが、この期間が子供の「身体感覚」「身体意識」「身体能力」に大きく影響を及ぼすわけですが、「遊ばせておく」ということの他に「運動を1つに絞らない」ということもお伝えしておきたいと思います。

この後、パフォーマンスピラミッドの話をしたいと思いますが、簡単に言うと、運動を1つに絞るとその子のパフォーマンスピラミッドの土台がすごく小さくなり、結果的に底辺が短い鋭角な三角形になっていきます。

この時期に一つの競技だけに集中してしすぎると、競技特性の強いピラミッドになってしまうので、「身体操作」という土台の部分に偏りが生じ、底辺が短い三角形が出来上がり倒れやすい三角形になります。

つまりは、パフォーマンスが上がりにくく、ケガもしやすくなるという訳です。

ですので、野球をしたり、サッカーをしたり、バレーをしたり、バスケットをしたり、いろいろなスポーツをしておくと言うのは様々な運動を経験できるので動きの幅、運動の土台を大きく育ててあげることができると言うことです。

技術を教えようとしても上達できない

親子の運動の場面でよくあるのが「逆上がり」の練習です。

「できないから教えて」と子どもに言われ一緒にチャレンジをした経験を持つ方も多いのではないでしょうか?

この「逆上がりをできるように教える」と言う点での私の視点をお伝えします。

きっと多くの方が、逆上がりの技術を伝えて、できるようにサポートなどをしてあげるのではないでしょうか?

実はその前にやることがあるのです。

逆上がりの場合ですと、できない1つの要因として、「身体が丸められていない」があります。

逆上がりの動きを見るとできない子は反っていませんか?実はこれだけだったりします。

背骨が丸まれているのか、骨盤が丸まれているのか、その姿勢のまま出力できるのか。

逆上がりの練習で逆上がりの動きだけで練習するのでなく、前転できるのか後転できるのか、実は前転・後転ができない子が逆上がりをするのはとても酷な話なのです。

どの運動も身体を丸める反るなど、その他の基本的な動作(子供の身体能力に必要な36の動き)の上に成り立っていて、その基本の動作をいかに幼少期に練習できているのかが様々な運動に関係してくるのです。

赤ちゃんに学ぶ運動の発育発達のヒント

子どもの運動能力を理解する上で、ぜひ知っていただきたいのが「発育発達のプロセス(流れ)」です。

このプロセスを理解する上でとてもよくわかるのが赤ちゃんの動きにあります。

赤ちゃんは生まれてから「仰向け」で過ごします。

そこから自力で寝返りをしていくのですが、

それまでには、仰向けで「オギャーオギャー」と泣き続けますよね?

これには運動という観点からも意味があって、実は大声で泣きながらインナーマッスルを鍛えているんです。

泣くことで腹圧をかけインナーマッスルを活性化させてまず胴体を鍛えているんです。

だから泣き止ませる必要はないんです。

頑張って頑張って疲れたら自分のタイミングで寝てくれます。

もちろんお腹が空いたり、気持ちが悪かったりとその辺りはフォローをしてあげるべきですが、基本的に泣く子はトレーニングを頑張っていると思ってください。

このインナーマッスルが活性化してくると鍛えた胴体を使って寝返りをうつようになります。

この頃はまだまだ腕や脚の筋肉がないので胴体だけで身体を動かそうとしてきます。

逆に大人になると、腕や脚の筋肉がついてくるので、そこに頼って身体を動かしがちになります。

そのため、胴体が使えずに、ダイナミックな動きや運動ができなくなり、怪我しやすい身体になったり、動きにくい身体になっていってしまうのです。

仰向け>寝返り>腹這い>四つ這い>座る>片足膝立ち>つかまり立ち>立つ

この赤ちゃんの発育動作を大人になってから行うと、身体の使い方がとてもわかりやすくなります。

実際に大人に対するトレーニングでもこの流れを取り入れています。

第二章「ファンクショナルトレーニング」

スポーツの上達には技術の上達という視点があります、その技術の前にあるのが、基本的な動きであるムーブメントです。

ムーブメントは基本的な身体の使い方になり、その基本ができていない状態で、スポーツに必要な複雑で高度な動きはできるはずもなく、とても難しく感じます。さらには、基本的な身体操作もままなっていないのでケガにまで発展しかねません。

うまく股関節が使えていないのに速く走れるか?>当然速くは走れないんです。

こういった時にうまく使えていない、関節や筋肉、骨の向きなどそういった基本的な部分を正しく使っていこうというのがファンクショナルトレーニングになります。

ファンクショナルは「機能的」という意味で、身体のパーツである肩・肘・股関節・膝・足首などがそれぞれ本来持っている機能をきちんと使えるようにしてあげることで身体が本来持つ運動機能を発揮できるようになります。

子どもの場合、遊ぶという行為が自然と機能的にパーツを使う訓練にもなってきます。

例えば整地されていない凸凹の地面で遊ぶとき、自然と安定させるために足裏足首を上手に使うようになります。

遊具でいえば、大人では考え付かないような登り方をしたりしますよね?(危ない時もありますが)この時にも、その時の身体の持てる機能を最大限使って動きを行っています。

身体の機能を最大限使うというトレーニングを遊びの中で自然と行えるのも子どもならではと言えます。

親子で試したい5つのファンクショナルトレーニング

1.重力を感じるファンクショナルトレーニング

地球に生きている以上重力の影響は必ず受けます。

ですので重力とうまく付き合うことは身体を上手く使うポイントになります。

重力とうまく付き合えていない子どもの例を出すととにかく「力んでいる」という見え方につきます。

  • 肩が上がっている
  • 膝が突っ張っている

何かしらの緊張状態にあるという姿勢が一番よく力みとして現れます。

プレッシャーなのか、ゲームのしすぎなのか、集中している時によく力みやすくなります。

本来ずっと集中するなどできるわけがありません、それなのにその緊張状態が続いているのは決して良い状態とは言えません。

ある意味集中しすぎない方が身体本来の機能が発揮しやすいとも言えます。

力みから解放する動き

●「片足立ち」

まずは片足立ちをしてみてください。

この時のポイントが手を使ってバランスを取らずに、頭の位置だけ止めるような意識を持ちます。

そして安定してきたら、その次は目を瞑って方足立ちをします。

片足立ちで止まってみよう」という声かけがいいですね。

これで安定して立てると力みが外れている状態です。

簡単なのでぜひ子供と一緒に行ってみてください。

●「呼吸」

力みでもう一つポイントになるのが呼吸になります。

力んでいる子供の特徴としては「呼吸が浅い」場合が多いです。

肩で呼吸している子は特に注意が必要です(胴体が使えていないため)。

数分間だけ瞑想など一緒にしてみるのも面白いと思います。

力んでいる子はじっとしていられないので、ゆっくり呼吸に意識を持っていってみるだけでも自然と力が抜けていく良い方法になります。

2.分離と共同

身体の機能を正しく変えるということは、身体の関節が正しく使えているということです。

人間の関節は260以上あります(数え方にもよりますが)その関節が使えていない箇所が少なければ少ないほど滑らかで繊細な動きができます。

それが日常生活で一定の関節しか使っていないと身体に歪みが出てしまいます。

指自体も指先だけでなく多くの関節があり、それらを立体的に使うことでより滑らかな動作を可能にしてくれます。

また主要な関節には、モビリティ(可動)スタビリティ(安定)とに大まかに役割が分けられており、それがそれぞれ分離共同という意味合いで機能的に動く働きをしてくれています。

大きな関節でいくと「肩の関節」ですが、これは大きく動くのでモビリティ(可動)となり、隣り合う肘はスタビリティ(安定)、隣り合う関節が可動と安定を順番に担ってくれているので正しく身体が動かせるという訳です。

これが肘も大きく動かしながら投げてしまったりなどすると、肘を痛めたりするということになります。

3.キネティックチェーン(運動連鎖)

キネティックチェーンを簡単にいうとつながり・連動という意味になります。

身体が連動して上手く使えているかというところになります。

考え方として、何か上手くいかない場合はこの連鎖が切れているという考え方になります。

輪っかが切れてしまうと円としての機能を持てなくなり、「どこが切れているかを見つける」と考えるとわかりやすいですね。

うまく投げられない子どもがいた場合、どこの連鎖が断ち切れているのかを見つけて繋げてあげることで上手く連動して投げれるようになるという訳です。

4.3面運動

3面運動というだけあって、動きは3つの面で成り立ちます。

  • 平行の面が「前額面:ぜんがくめん」
  • 垂直の面が「矢状面:しじょうめん」
  • 輪切りの面が「水平面:すいへいめん」

と言います。

基本動作である「歩く」もこの3面で成り立つことが言えます。

  • 前に進むのが矢状面
  • 横の体重移動が前額面
  • ひねりが水平面

となります。(掲載中の動画の中でご確認いただけます11:20あたり)

この3面が上手に機能すると立体的な動きとなり、スムーズな動作へとつながります。

投げるのが苦手な子供の場合、見ていてなんだかぎこちないなと思うこともあるかと思います。

そんな時はこの3面のどこかが機能していないかを見てあげると、改善のヒントにもなります。

5.力の吸収と力の発揮

力の吸収力の発揮とは簡単にいうと、動作の前の「ため(ローディング)」と「実行(アクション)」をスムーズに行うという動作になります。

ジャンプを考えてみてください。

単純にためた方が高く飛べますよね?プロになるとこのための動作とジャンプを瞬時に最高出力で行うので質の高いジャンプを行えるという訳です。

子供にこれを教える時には、上に上に飛ぶのでなく、下をめいっぱい蹴るというふうに伝えてあげるとための効いたジャンプをすることができます。

パフォーマンスピラミッド

パフォーマンスピラミッドとは簡単にいうと、運動のパフォーマンスを表す三角形のことを言います。

三角形を三つに分類して

  • 一番上を「スキル:技術」
  • 中段を「パフォーマンス:体力」
  • 一番下を「ムーブメント:身体の動き」

にわけて考えます。

どんなに練習しても上手くいかない場合はこのピラミッドが上手く作れていない場合があります。

プロが基礎を大事にするというのは、この底辺を大切にしているという意味ですね。

土台がしっかり作れていない状態でスキルを上げていくと、細長い三角形になってしまい、いつかは倒れてしまう・・・ケガなどへつながることになってしまう訳です。

子供のスポーツでの怪我について

パフォーマンスプラミッドの話もしましたが、成長につれてスポーツに求められるものも多くなり、このピラミッドが崩れてケガにつながると説明しました。

実は最初にケガや不調が出てくるタイミングとして多いのが、小学校の高学年になります。

このタイミングは筋力がつき出すタイミングでもあるため、筋力で身体を動かし出す時期でもあります。

低学年では筋力がまだ足りないので身体の動きを上手く使おうとしていきます。

赤ちゃんの動きとまさに同じで、身体の正しい機能をフルに使って乗り越えようとする訳です。

それが筋力による動きに変わってしまうので、筋力の酷使による疲れや動きの歪みが大きくなりケガや不調が出てくる訳です。

パフォーマンスピラミッドを底上げする習い事

基本は自由に遊ばせてあげることが、身体の使い方の上達としては一番良い選択の一つと言えます。

合わせて、親として上記内容を理解した上で、子どもの習い事をサポートするのもとても良いことだと思います。

上達はスキルだけでないという理解を親が持っているかどうかだと思います。

よく習い事で一番良いものは何かと聞かれますが、ポイントは「身体一つでできることから始める」道具を使わない運動が良いとアドバイスをします。

例をあげるのであれば、体操水泳ボルダリングなども土台を作るには良いと考えています。

道具を使うスポーツはある程度成長してからでも本人の意思に任せて始めれば良いと思います。

土台を作って身体を動かすことを考えるのであれば、身体一つでできる習い事がベストだと思います。

もちろん習い事でなくても公園遊びでも十分です。

その上で習い事(スポーツ)の上達という視点で言えば、誰に習うかだと思います。

スポーツということを考えると、時間ルールが鍵になってきます。

ルールのある中でパフォーマンスをあげる必要が出てくるので、その中で最高到達点を目指すのであれば、誰かに教わるというのが一番の上達の近道になります。

子供のスポーツ上達のために親にできること

よく親御さんから相談されるのが、「教え方がわからない」「がっかりさせたくない」などのご相談をいただきます。

親御さんができる状態で、そのコツを伝える方法はアリだと思います。

しかし親もできないことを子どもに教えるのはどうやっても難しいと思います。

よく「口と手を出さずにお金を出す」と言いますが、できないのであれば、できる人に任せるというのが正解だと思います。

親が勉強してできる身体になってそれを子供に伝えるという方法もありますが、それするには時間と労力が必要なので子どもはその間に成長してしまいます。

逆上がりの場合も、教えることができないのであれば、体操に通わせてあげればいいだけの話なのです。

できる環境を作ってあげるのが親にできる最大のサポートだと思います。

もう一つは、できる友達と遊ばせることだと思います。

なぜかはわからないですが、子どもはできる友達と一緒にやるとできるようになることが多々あります。

神秘的なところですが目に見えないところで感じあって表現できるのも子どものすごいところだと思います。

親として、教えたいという思いもとても大事な思いですので、もし自分で教える場合は、子どもを信じてあげることだと思います。

できるところを何度も見せていると、自然とできるようになったりもします。

やはり子供を信じてあげることが上達のポイントかもしれませんね。

「ああしなさい、こうしなさい」ではなく「今こうなっているよ」と現状を伝えてあげると自分で考えてできるようになったりもします。

理屈でなく「自分の足を頭をこすようにブァーっと」などイメージで伝えるのもいいかと思います。

教えるのでなく一緒に上達するという意識でサポートしてあげると親も子も一緒に上達できるように思います。

自分史上最高の身体へ